化学反応の起こる方向

はじめに

自然界にある物質及びその構成粒子は、エネルギーを多く持っている不安定な状態から、エネルギーの少ない安定した状態へ変化する傾向を持っている。つまり発熱反応がおきやすいのである。

エネルギーの減少

発熱反応が起きやすいことは、右のエネルギー図からも説明できる。

物質Aから物質Bへの反応は発熱反応であるが、これはE1の山を越えるだけでよい。しかし、物質Bから物質Aへの反応(吸熱反応)はE2の山を越えなければならない。

当然、山(活性化エネルギー)の低い方が乗り越えやすいので、発熱反応が起きやすい。

このように物質は、自発的な状況(加熱や加圧などをしない状況)では、発熱反応の方向(エネルギーを減少させる方向)へ化学反応を起こす。

しかし室温でも、水にNaNO3やKNO3を溶かすと吸熱反応が起きる。このことは、化学変化の方向がエネルギーの減少だけで決まるものではないことを示している。

乱雑さ

水を入れたビーカーに赤インクを一滴たらすと、はじめ一箇所に集まっていたインクは、時間の経過とともに拡散していく。そして赤インクが最初の状態(一箇所に集まっていた状態)に戻ることは決してない。

それはなぜか?それは、インクが一箇所に集まっている秩序正しい状態よりも、バラバラに拡散した無秩序な状態、いわゆる乱雑さ(エントロピー)の大きい状態のほうが確率的に考えて圧倒的に高いからである。

以上のことから、化学変化の方向を決める要因には、エネルギーの減少とエントロピー(乱雑さ)の増大の2つがあり、その兼ね合いによって変化の方向が決まる。

すなわち、発熱反応かつエントロピーが増大する反応であれば自発的に反応は進み、反対に、吸熱反応でエントロピーが減少する反応は自発的には起こらない。

また、吸熱反応(または発熱反応)でも、エントロピーが増大(または減少)する場合は、その兼ね合いによって反応の方向が決まる。