分離抽出
一般に、有機化合物は有機溶媒には溶けやすいが、水には溶けにくい※。しかし、有機化合物には次のような酸性物質、塩基性物質、中性物質があり、
- 酸性物質・・・カルボン酸、フェノール類、スルホン酸
- 塩基性物質・・・アミン
- 中性物質・・・アルコール、炭化水素、ニトロ化合物、エステル、アミドなど
このうち中性物質以外は、すべて酸、塩基と中和反応を行い、水溶性の塩(イオン)に変わり、水に溶けやすくなる。
そのためいくつかの有機化合物が混ざった混合物質があった場合、それらを有機溶媒に溶かし、酸または塩基の水溶液を順次加えて振り混ぜて中和すると、水溶性の塩になった有機化合物が有機溶媒層から水層へ分離される。
このように、混合物から各溶媒に対する溶解性の違いを利用して、物質を分離する操作を抽出と言う。抽出には分液漏斗という器具が用いられる。
※有機化合物は水に溶けにくいが、炭素数が少なく、親水基(-OH、-COOH、-CO-、-NH2)をもつ有機化合物は水に溶けやすい。
分離抽出に使われる有機溶媒
- 水に浮く有機溶媒・・・ジエチルエーテル、ベンゼンなど
- 水に沈む有機溶媒・・・ジクロロメタン、クロロホルム(トリクロロメタン)、四塩化炭素(テトラクロロメタン)
※クロロホルムには毒性(麻酔性)、ジエチルエーテルには引火性があるので、これらを有機溶媒として用いる場合は換気を行うこと。
分離抽出における有機溶媒に求められる条件
- 有機物をよく溶かし、逆に、水に溶けにくい。
- 酸や塩基と反応しにくい。
- 比重が1に近すぎず、2層に分離しやすい。
- 沸点が低く、蒸発しやすい(除去しやすい)。
エタノールは分離抽出の溶媒として利用できるか?
エタノールは、水と任意の割合で混ざり合うので、水層とエタノール層に分離できない。よって、エタノールは分離抽出の溶媒として利用できない。