塩化水素(HCl)の発生~なぜNaHSO4?

疑問

塩化水素(HCl)は、実験室においては塩化ナトリウム(NaCl)に濃硫酸(H2SO4)を加えて加熱して発生させる。

NaCl + H2SO4 → NaHSO4 + HCl ・・・①

塩化水素は①式のように発生するが同時に硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)も生成する。しかしここで、以下のように硫酸ナトリウム(Na2SO4)が生成する化学反応も考えられる。

2NaCl + H2SO4 → Na2SO4 + 2HCl ・・・②

しかし塩化水素の発生は②式ではなく①式をとる。これはなぜか?

理由

それは濃硫酸の第2電離

HSO4  H+ + SO42・・・③

が起こりにくい上、強酸であるHClが生成するため③式の平衡は著しく左向きに移動しているからである。そのため反応溶液中には硫酸イオン(SO42)は存在しにくく、硫酸水素イオン(HSO4)とナトリウムイオン(Na+)によってNaHSO4が生成すると考えられる。

したがって、塩化水素を発生させる反応式は、②式ではなく①式である。

なお、500℃以上の高温では、②式の反応が起こり、Na2SO4が生成する。しかし実験室で行う通常の加熱では500℃以上の温度は現実的ではない。