触媒

室温では過酸化水素水はほとんど分解しないが、少量のFeCl3水溶液または酸化マンガン(Ⅳ)MnO2の粉末を加えると、激しく分解が始まり以下のように酸素を発生する。

2H2O2 → 2H2O + O2

反応終了後、残っているFe3+やMnO2の量を調べても、反応前に加えた量と変化が見られない。

このように、反応の前後でそれ自体は変化しないが、少量でも反応速度に大きな影響を与える物質を触媒という。

なぜ触媒によって反応速度が上がるのか?

化学反応(反応物→生成物)が起きるためには、反応物がもつエネルギーが左図の“峠(活性化エネルギーという)”を超えなければならない。

この活性化エネルギーが高ければ高いほど“峠越えが困難”なので、化学反応は起きにくい。逆に、低ければ低いほど“峠越えが容易”なので、化学反応が起きやすい。

化学反応を起こす際に加熱することが多いが、それは反応物に熱エネルギーを与え活性化エネルギーを越えをさせているわけである。

さて、図に示すように、触媒のない場合に比べて触媒のある方が活性化エネルギーが低くなっている。つまり触媒は、活性化エネルギーを小さくする働き(別の反応経路をつくる働き)があるため反応速度を大きくすることができる。

また、触媒は反応の途中に関与するだけで、反応の前後ではまったく変化しない。つまり、触媒を加えることによって、反応物のもつエネルギー量と生成物 のもつエネルギー量はまったく変化しないので、その差である反応熱Qの大きさは変化しない。

なお、触媒は本来起こりうる反応の活性化エネルギーを下げる物質であり、本来起こらない反応を進行させる力はない。

触媒によって変化するもの・しないもの

触媒を用いると、活性化エネルギーの小さな別の反応経路をつくるため、反応速度が大きくなる。

触媒を用いても、反応熱、反応終了時の生成量、平衡定数(平衡状態)は変わらない。

化学工業における触媒

化学工業における重要な反応には、その目的に応じて最も適当な触媒が選択され使用される。

例えば、窒素と水素からアンモニアをつくる反応(ハーバー法)では四酸化三鉄(現在はFe-K2O-Al2O3)が、二酸化硫黄から硫酸をつくる反応(接触法)では五酸化二バナジウム、アンモニアから硝酸をつくる反応(オストワルト法)では白金が触媒として使用されている。

日常生活における触媒

触媒は、日常生活の中にもさまざまな役割を果たしている。たとえば、自動車の排気ガス中には、窒素酸化物や一酸化炭素、炭化水素(未燃焼のもの)などを多く含み、そのまま放出すれば大気汚染の原因となる。これらは、マフラー中にあるAL2O3にPtやPd、Rhを付着させた触媒により、無害なN2、CO2、H2Oに変えたのち大気中に放出される。

(主反応)2NO + 2CO → 2CO2 + N2